【マインドフルネス解説】やり方と効果・注意点|呼吸・歩行・食事の3つの実践法
心療内科医カズ
はじめに:「考えに巻き込まれすぎない」ための練習
過去の出来事を何度も思い返してしまう。まだ起こっていない未来のことを心配し続けてしまう。気がつくと、頭の中はいつも何かでいっぱいで、目の前のことに集中できない。
こうした思考の暴走(反芻思考や予期不安)は、ストレスや気分の落ち込み、不眠などと関係します。考えること自体は本来役立つ行動ですが、止められないほど続くと、それ自体がストレス源になります。
マインドフルネス(mindfulness)は、こうした「考えすぎ」の状態に気づき、思考や感情に巻き込まれすぎず、今この瞬間の体験へ注意を戻す練習です。米国のジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)が1970年代末に開発した「マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)」を重要な契機として、過去40年以上にわたり、医学・心理学の領域で研究と臨床応用が積み重ねられてきました[1]。
この記事では、マインドフルネスの基本的な定義、研究で示されている効果、見落とされがちな注意点、そして具体的な実践方法(呼吸・歩行・食事)について、心療内科・心理臨床で用いられる知見をもとに解説します。
この記事の位置づけ:本記事はマインドフルネスの一般的な実践方法と、研究で示されている効果・注意点・有害事象について、公開されている文献と臨床的知見をもとに解説するものです。本記事は専門家による指導の代替ではありません。心的外傷後ストレス障害(PTSD)、解離性障害、精神病性障害の既往がある方、現在精神科・心療内科に通院中の方は、開始前に必ず主治医にご相談ください。
マインドフルネスとは何か
定義
日本マインドフルネス学会では、マインドフルネスを次のように定義しています[2]。
今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること
定義の構成要素を分解すると、次のようになります。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 今、この瞬間 | 過去や未来ではなく、今起きていることに焦点を合わせる |
| 意図的に意識を向ける | 注意の対象を、自分で選ぶ |
| 評価をせずに | 「いい・悪い」「正しい・間違っている」という判断を保留する |
| とらわれのない状態で | 浮かんだ思考や感情に気づきつつ、それを追いかけすぎない |
| ただ観る | 対象を無理に変えようとせず、観察する立場に戻る |
「評価しない」とは何を意味するか
定義で最もわかりにくいのが「評価しない」「とらわれない」という部分です。
「評価する」とは、出来事や感覚を自分の価値観で判断することです。「これは嫌だ」「これは恥ずかしい」「これはダメだ」と頭の中で判断が始まると、それに伴って不快な感情が次々と出てきます。一度生まれた感情はさらに新しい思考を呼び、思考と感情が連鎖して頭の中をぐるぐる回る状態(反芻)が起こります。これが「とらわれた状態」です。
「評価しない」とは、思考や感情の発生を止めることではありません。「今、こんな思考が浮かんできたな」「今、こんな感情が出てきたな」と気づき、それを良い・悪いとすぐに判断せず、必要以上に追いかけない姿勢を指します。これが「ただ観る」に近い態度です。
Cambridge辞書の定義
英語圏での一般的な定義は、Cambridge辞書では次のように記されています。
The practice of being aware of your body, mind, and feelings in the present moment, thought to create a feeling of calm.[3]
体・心・感情に、今この瞬間の意識を向ける練習であり、穏やかさをもたらすと考えられている、というシンプルな表現です。
マインドフルネスの効果
システマティックレビュー・メタ解析で示されている効果
マインドフルネスや瞑想プログラムの効果については、過去数十年にわたり研究が蓄積されています。代表的なシステマティックレビュー・メタ解析では、マインドフルネス瞑想プログラムについて、不安症状、抑うつ症状、痛みの軽減に対して一定の効果が示されています[4]。
一方で、ストレス全般、睡眠、集中力、生活の質などへの効果は、研究によって結果にばらつきがあります。そのため、「幅広い不調に必ず効く」と考えるのではなく、補助的なセルフケアや治療プログラムの一部として位置づけるのが適切です。
脳への影響
瞑想経験者を対象とした脳画像研究のレビューでは、前帯状皮質、島皮質、海馬、前頭前野など、注意、身体感覚、感情調整、自己認識に関わる領域で、脳構造の違いが報告されています[5]。ただし、これらの研究には横断研究も多く含まれるため、瞑想によって脳が変化したと因果関係を断定するには慎重さが必要です。
また、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる、自己関連思考や mind-wandering に関わる脳ネットワークについて、瞑想経験者では活動や機能的結合に違いがみられることが報告されています[6]。これは、瞑想実践が自己関連思考や注意の向け方と関係している可能性を示しますが、「考えすぎが客観的に減る」と直接断定できるものではありません。
自律神経への影響
瞑想やマインドフルネス関連プログラムでは、心拍、呼吸、皮膚コンダクタンス、心拍変動性(HRV)など、自律神経系の指標に変化がみられることがあります。Tang らの研究では、短期の統合的心身訓練により、中枢神経系と自律神経系の相互作用に変化がみられたと報告されています[7]。
ただし、介入の種類や練習期間によって結果は異なるため、「マインドフルネスを続ければ必ず副交感神経が高まる」とは言えません。
マインドフルネスの注意点:知っておくべきこと
マインドフルネスは多くの人にとって安全に実践できることが多い一方で、すべての方に無条件で勧められるわけではありません。特に、強いトラウマ反応、解離症状、精神病症状、重度の抑うつ症状などがある場合は、実践方法やタイミングに注意が必要です。
起こりうる有害事象
瞑想実践に関連する困難な体験を調べた研究では、以下のような体験が報告されています[8]。
- 不安や恐怖、パニック様症状
- 抑うつ気分の悪化
- 身体感覚の変化
- 離人感・現実感の変化(自分が自分でない感覚、現実感の喪失)
- 過去のつらい記憶がよみがえる体験
- 知覚の変化(特に長時間・集中的な瞑想で)
ただし、Lindahl らの研究は主に西洋の仏教瞑想実践者を対象とした研究であり、MBSRなどの臨床的マインドフルネス・プログラム一般にそのまま当てはめるには注意が必要です。それでも、PTSD、解離症状、精神病性障害、重度の気分障害がある方では、自己流で長時間・集中的に行うことは避け、専門家に相談しながら行うことが望ましいです。
専門家への相談が望ましい場合
以下に該当する方は、自己判断で長時間・集中的な実践を行わず、開始前に主治医やマインドフルネスに精通した専門家へ相談してください。行う場合も、短時間から始め、不快感が強まったときに中断できる形で行うことが大切です。
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)または強いトラウマ反応がある方
- 解離症状の経験がある方
- 重度のうつ病、強い自殺念慮、自傷衝動がある方
- 双極性障害の躁状態・混合状態・急性期にある方
- 精神病性障害、または幻覚・妄想などの精神病症状が現在ある方
- 子ども時代の重度の虐待経験など、身体感覚や内面への注意で苦痛が強まりやすい方
- パニック発作が起こりやすく、呼吸や身体感覚への注意で不安が強まりやすい方
これらの状態では、呼吸、身体感覚、感情、記憶に注意を向けることが、不安、フラッシュバック、解離感、身体症状へのとらわれを強めるきっかけになることがあります。
安全に実践するための原則
セルフケアとしてマインドフルネスを行う際の、安全のための原則は次の3つです。
1. 不安が強い人は、目を開ける・半眼で行う選択肢を持つ
目を閉じると、内的な体験への集中度が高まり、不安、身体感覚へのとらわれ、解離感が強まる人もいます。指導者がいない場合や不安が強い場合は、目を完全に閉じず、半眼にする、視線を下に落とす、部屋の中の安全な一点を見るなど、外界とのつながりを保つ方法が有用です。
2. 不快感が強い時はすぐに中断する
「これ以上続けるのが辛い」と感じたら、迷わず中断してください。目を開ける、周囲を見る、足裏の感覚を確かめる、部屋の中にある物の名前を言う、水を飲むなど、外界や身体の安定感に注意を戻す方法が役立ちます。「我慢して続けるべき」という考えは、マインドフルネスとは逆方向の発想です。
3. 異変を感じたら医療機関に相談する
実践後にフラッシュバック、強い動揺、抑うつの悪化、現実感の喪失、幻覚・妄想様の体験などが現れた場合は、自己判断で続けず、医療機関にご相談ください。
マインドフルネスのやり方:3つの実践法
1. マインドフルネス呼吸法
最も基本的で、最初に取り組みやすい技法です。
姿勢
椅子に座る、正座、あぐらのいずれかで、背筋を伸ばし、肩の力を抜きます。仰向けに寝た姿勢でも構いませんが、眠ってしまいやすい方や、眠気ではなく気づきを保つ練習をしたい方は、座った姿勢の方が取り組みやすいでしょう。
目は閉じても半眼でも構いません。不安が強い方、解離感が出やすい方、眠くなりやすい方は、半眼にして視線を1〜2メートル先の床に自然に落とす方法が向いています。
注意の向け方
呼吸に意識を向けます。意識する場所は、自分が感じやすい場所を選びます。
- 鼻先:空気が出入りする感覚
- 胸:呼吸とともに膨らみ・縮む感覚
- お腹:呼吸とともに膨らみ・縮む感覚
特定のリズムで呼吸する必要はありません。呼吸を深くしよう、整えようとしすぎず、自然な呼吸に気づくことを目指します。呼吸に注意を向けると不安が強まる方は、足裏の感覚、手の触覚、周囲の音など、別の対象を選んでも構いません。
思考が浮かんでも責めない
しばらくすると、必ず別のことを考え始めます。「あの仕事、どうしよう」「お腹すいたな」「これでいいのだろうか」。これは正常な反応です。
別のことを考えていることに気づいたら、気づいた自分を責めずに、再び呼吸に意識を戻します。何度でも繰り返してかまいません。
葉っぱのイメージ
考えや感情にとらわれそうになったら、川の上流から葉っぱが流れてくるイメージを使う方法もあります。浮かんだ思考や感情を、葉っぱの上にそっと載せて、下流に流していくイメージです。これは思考から距離を取るための補助的な方法ですが、つらい記憶や感情が強まる場合は無理に続けず、目を開けて周囲を見るなど、より安定する方法に切り替えてください。
2. マインドフルウォーキング
座って行うのが難しい方や、外出時に取り入れたい方には、歩行中に行うマインドフルウォーキングが向いています。
やり方
歩きながら、以下のいずれかに注意を向けます。
- 足の裏の感覚:かかと→足裏全体→つま先と地面に触れる感覚
- 歩く動作:膝の動き、腕の振り、体重の移動
- 呼吸:自然な呼吸の出入りに気づく。無理に歩くリズムへ合わせる必要はありません。
スピードは普段より少しゆっくりが目安です。考えが浮かんだら、再び体の感覚に意識を戻します。
日常の中に組み込みやすいのが利点ですが、交通量の多い道、駅のホーム、階段、人混み、自転車や車の運転中など、周囲への注意が必要な場面では行わないでください。屋内、庭、公園の安全な場所など、危険の少ない環境で行うのが適しています。
3. マインドフルイーティング
食事の時間を使った実践法です。
やり方
食事の最初の数口だけでも構いませんので、以下に意識を向けます。
- 視覚:色、形、盛り付け
- 嗅覚:香り
- 触覚:箸やスプーンを通じた手触り、口の中の食感
- 味覚:味の変化、舌のどの場所で何を感じるか
- 温度:温かさ・冷たさ
普段は「次に食べるもの」「スマホの内容」「仕事のこと」を考えながら食べていることに気づくはずです。それに気づくこと自体が、マインドフルネスの第一歩です。
満腹感や空腹感への気づきが高まることで、食行動の見直しに役立つ可能性があります。レビュー研究では、マインドフルネス、マインドフルイーティング、直感的食事が食行動の変化に関連する可能性が示されていますが、効果の大きさや持続性には研究間でばらつきがあります[9]。
練習時間の目安
まず短時間から始める
セルフケアとして始める場合は、1日3〜10分程度から無理なく始めるのが現実的です。
3分も難しい方は、30秒〜1分のごく短い実践から始めても構いません。慣れてきたら5〜10分に増やし、さらに余裕があり、不快感が強まらない場合は15〜20分程度まで延ばしても構いません。ただし、長時間行えば効果が高いとは限らないため、体調に合わせて調整します。
続けるコツ
- 時間を固定する:朝起きて5分、寝る前に5分など、生活のリズムに組み込む
- 完璧を求めない:「できなかった日」があっても、翌日また始める
- 効果を急がない:効果の実感は、人によって数週間〜数ヶ月かかる
- 記録をつける:簡単なメモでも、継続のモチベーションになる
日常の「マイクロ・マインドフルネス」
座って行う練習だけでなく、日常の中にも短いマインドフルネスを散りばめることができます。
- 信号待ちの30秒、呼吸に意識を向ける
- お茶を飲む最初の一口、味と温度に集中する
- ドアを開ける前に、自然な呼吸を3回分だけ感じる
これらは「正式な練習」とは別に、生活そのものに気づきをもたらす効果があります。
まとめ:「気づくこと」自体が、もう変化の一部
マインドフルネスは、ストレスへの対処、不安症状、抑うつ症状、痛みなどに対して、一定の効果が報告されているセルフケア技法・心理的介入です。ただし、不眠や集中力などへの効果は研究によってばらつきがあり、医療的治療の代替ではなく補助的な方法として位置づけるのが適切です。
- 「今この瞬間」に、判断を加えすぎず意識を向ける練習である
- 反芻思考や不安に気づき、そこから注意を今の体験へ戻す練習である
- 呼吸・歩行・食事の3つを入口に、無理のない範囲で始められる
- PTSD、解離症状、精神病症状、重度の気分症状などがある場合は、自己判断で長時間行わず、主治医や専門家に相談する
- 一人で行う場合は短時間から始め、不安が強い人は半眼や開眼で行い、不快感が強い時はすぐに中断する
「うまくできない」と感じる日があっても、そのことに気づき、必要に応じて呼吸や身体感覚、周囲の音へ注意を戻すこと自体が練習になります。完璧を目指す技法ではなく、気づきと自分への思いやりを育てる練習として、無理のない範囲で日常に取り入れてください。
実践後に強い動揺や不快感が続く場合、または症状が悪化する場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
[1] Kabat-Zinn, J.(2013). Full Catastrophe Living: Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness(Revised ed.). Bantam Books. /邦訳:『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房.
[2] 日本マインドフルネス学会. 「マインドフルネスとは」.
[3] Cambridge Dictionary. “Mindfulness.”
[4] Goyal, M., Singh, S., Sibinga, E. M. S., et al.(2014). Meditation programs for psychological stress and well-being: A systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 174(3), 357–368.
[5] Fox, K. C. R., Nijeboer, S., Dixon, M. L., et al.(2014). Is meditation associated with altered brain structure? A systematic review and meta-analysis of morphometric neuroimaging in meditation practitioners. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 43, 48–73.
[6] Brewer, J. A., Worhunsky, P. D., Gray, J. R., Tang, Y. Y., Weber, J., & Kober, H.(2011). Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(50), 20254–20259.
[7] Tang, Y. Y., Ma, Y., Fan, Y., et al.(2009). Central and autonomic nervous system interaction is altered by short-term meditation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(22), 8865–8870.
[8] Lindahl, J. R., Fisher, N. E., Cooper, D. J., Rosen, R. K., & Britton, W. B.(2017). The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists. PLoS ONE, 12(5), e0176239.
[9] Warren, J. M., Smith, N., & Ashwell, M.(2017). A structured literature review on the role of mindfulness, mindful eating and intuitive eating in changing eating behaviours. Nutrition Research Reviews, 30(2), 272–283.
免責事項:本記事はマインドフルネスの一般的な実践方法と、研究で示されている効果・注意点・有害事象について、公開されている文献と臨床的知見をもとに解説するものであり、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。本記事は専門家による指導の代替ではありません。心的外傷後ストレス障害(PTSD)、解離性障害、精神病性障害の既往がある方、現在精神科・心療内科に通院中の方は、開始前に必ず主治医にご相談ください。実践中または実践後に強い動揺・フラッシュバック・解離症状・抑うつの悪化が生じた場合は、自己判断で続けず、医療機関にご相談ください。
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