相手を不快にさせずに自分の言いたいことを伝える【アサーションを用いた自己主張トレーニング】

アサーション セルフケア

相手に合わせてしまい、自分の言いたいことを言えなかったことはありませんか?
あるいは、イライラして自分の気持ちを相手にぶつけて、相手を不快にさせてしまい、後悔した経験はありませんか?
自分の気持ちをおさえてばかりいるとストレスがたまるし、イライラして自分の気持ちをぶつけても相手との関係が悪くなって、人間関係において、どちらもうまくいきません。
相手を不快にさせないで自分の思いを伝えることができる方法(アサーション)を習得すれば、対人関係がうまくいきます。
そこで、この記事ではアサーションおよびアサーションを習得するためのアサーショントレーニングについて解説します。

スポンサーリンク

アサーションやアサーショントレーニングについて

アサーション、アサーティブとは?

アサーション(assertion)をロングマン現代英英辞典で調べると、下記のように書いてあります。

something that you say or write that you strongly believe(強く信じていることを言ったり書いたりすること)

ロングマン現代英英辞典より

もともとは、「主張」の意味ですが、心理学におけるアサーションは、「適切な自己主張(自己表現)」の意味になります。ちなみに監査におけるアサーションは、「経営者の主張」の意味になります。

アサーションの形容詞が「アサーティブ」になります。
アサーティブなやりとりをすることで、良好なコミュニケーションがとれて、対人関係がうまくいきます。

アサーショントレーニングとは?

アサーショントレーニングは、「適切な自己主張(自己表現)ができるようになるための訓練」の意味になります。
アサーティブな自己主張(自己表現)は、練習しないとなかなかうまくできません。
身近な人を対象にして、アサーティブな自己主張(自己表現)の練習をしてみましょう!
具体的なアサーティブな自己主張(自己表現)については、あとで述べます。

アサーションスキルとは?

スキルとは、「訓練によって得られる能力や技術」の意味であり、前に述べたようにアサーションは訓練によって得られる能力や技術です。
つまり、アサーションスキルとは、「適切な自己表現(自分の意見や感情を言葉などで伝えることなど)ができる能力や技術」です。
社会では、人と関わりながら生きていくために必要なコミュニケーションスキルを身につける必要があり、そのコミュニケーションスキルの一つがアサーションスキルです。

相手とのコミュニケーションにおける3つのタイプ

相手とのコミュニケーションには、大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 自分の言いたいことが言えないタイプ(他者優先)
  • 相手を不快にさせたとしても、自分の意見を主張するタイプ(自己中心)
  • 相手の気持ちを理解したことを伝えたうえで、自分の意見を主張するタイプ(アサーション)

他者優先タイプ

他者優先タイプは、相手のことを優先して、自己主張をしないタイプです。
相手に意見に合わせて、自分の意見を主張しないため、相手との関係は悪くなることはほとんどありません。
でも、自分の気持ちを抑え続けることは難しく、不満がたまった後に感情的になって相手に気持ちをぶつけてしまうかもしれません。

自己中心タイプ

自己中心タイプは、相手の気持ちは考えずに、相手が不快な気持になったとしても自分の意見を主張するタイプです。
相手が我慢しているうちは、自分の意見が通りますが、そのようなコミュニケーションを続けていくと、孤立してしまったり、相手が自分から離れていったりすることになります。

アサーションタイプ

アサーションタイプは、相手が不快にならないように配慮しながら、自分の意見を主張するタイプです。
相手の意見と違っていた場合には、相手の意見に同意する必要はありませんが、相手の意見を尊重していることを相手に伝えた上で、自分の意見を伝えることができれば、長期的にも良好な関係を続けることができます。

相手とのコミュニケーションにおける3つのタイプの例

上記の3つのタイプは、なんとなくわかったと思います。
ドラえもんの「のび太」は、他者優先タイプで、「ジャイアン」は、自己中心タイプで、「しずかちゃん」は、アサーションタイプとして紹介されることも多いのですが、実際には、同じ人でも職場の上司とのコミュニケーションでは、言いたいことが言えない他者優先タイプになり、家では干渉してくる親に対して「うるさい」など言いたいことを言ってしまう自己中心タイプになり、親友とはアサーションタイプになる人もいます。
職場では、上司に合わせる必要がある時には、他者優先タイプになる必要があり、アサーティブなコミュニケーションをしていても干渉してくる親に対しては、自己中心タイプになることも必要になるかもしれません。
そのため、どのタイプのコミュニケーションが良いとか悪いとかではなく、状況や相手に応じて、どのコミュニケーションのタイプも取れるようにしておくことが重要です。
ただ、長期的な視点で見るとアサーティブなコミュニケーションがしっかりできているほうが、対人関係がうまくいきます。

実際の場面で、相手とのコミュニケーションにおける3つのタイプとは、どのようなものなのかを下記に例として会話を示します。

相手に仕事を手伝ってほしい時の例

  • 他者優先タイプ:何も言えずに、自分一人で仕事を抱え込む
  • 自己中心タイプ:「そんなことしてないで、こっちの仕事を手伝ってよ!」
  • アサーションタイプ:「忙しいと思うけど、こっちの仕事を手伝ってもらえるとうれしい。」

アサーショントレーニング

他者優先タイプや自己中心タイプのコミュニケーションは、訓練しなくてもできる人が多いと思います。
でも、アサーションタイプのコミュニケーションをできる人は、多くはありません。
そのため、相手とアサーティブなやりとりができるようになるには、訓練が必要になってきます。
アサーティブなやりとりを行うために必要な要素は下記の5つであり、これらについてトレーニングを行う必要があります。

  • 相手の気持ちを推察する
  • 自分なりのものの見方や考え方について考え直す
  • 感情的にならないようにする
  • 相手を尊重していることがわかるように相手に伝える
  • 相手に対する要求を主張しないで、自分の気持ちを伝える

相手の気持ちを推察する(ロールプレイを含む)

ふだん、私たちは相手の気持ちをわかっているつもりでも、実際にはわかっていないことが多くあります。
そのため、アサーションで相手の気持ちを尊重するには、相手の気持ちを推察するトレーニングを行うことが重要になってきます。
具体的には、相手の立場に立って考えることで、相手の気持ちを推察することができます。
また、ロールプレイ(実際のコミュニケーション場面を考えて、そこに出てくる人物の立場に置かれたかのような体験を通じて、理解を深めてスキルを身につける方法)といって、自分が相手役になって他者優先タイプのコミュニケーションをとられた時と自己中心タイプのコミュニケーションをとられた時とアサーションタイプのコミュニケーションをとられた時に、どのように感じるのかを練習してみましょう。

自分なりのものの見方や考え方について考え直す

私たちは、自分なりのものの見方や考え方を持っています。
でも、その中には現実的でなく、悪い方に考えてしまって冷静な判断ができていない場合があります。
そのような時には、認知療法を用いて、出来事に対する思いについて考え直すことで、相手に対する気持ちが変化します。
認知療法の詳細については、こちらをご覧ください。

感情的にならないようにする

感情的になっていては、アサーティブなコミュニケーションができません。
そのため、自分の感情はコントロールできるようにしておきましょう。
実は、上記の「相手の気持ちを推察する」や「出来事に対する思いについて考え直す」を実践することでも感情的にならないようになってきます。
そのほかにもマインドフルネスや自律訓練法なども効果があります。
マインドフルネスの詳細については、こちらをご覧ください。
自律訓練法の詳細については、こちらをご覧ください。

相手を尊重していることがわかるように相手に伝える

アサーティブなコミュニケーションでは、自分の気持ちを伝える前に、相手を尊重していることがわかるように相手に伝えることが大切です。
先ほどの例であれば、自分の主張の前に相手に対して「忙しいと思うけど」と伝えることで、相手のことをちゃんと理解して尊重していますということをまず伝えましょう!

相手に対する要求を主張しないで、自分の気持ちを伝える

自分の主張をする場合に多いのが、相手に「こうしてほしい」といった要求を主張することがあります。
相手に「こうしてほしい」と思う時には、私たちは、「相手が悪いから、相手が変わるべきだ」と考えてしまいがちです。
でも、相手の言動を変えることはとても難しく、できないと思った方がいいです。
相手の言動を変えようと思っていても相手は変わらないため、ストレスがたまってしまいます。
相手の言動を変えることはできなくても、自分の言動を変えることはできます。

アサーティブなコミュニケーションをするには、相手に対する要求を主張しないで、自分の気持ちを伝えることが大切です。
先ほどの例では、「こっちの仕事を手伝ってよ!」と相手に仕事を手伝ってもらうことを要求するのではなく、「こっちの仕事を手伝ってもらえるとうれしい。」と自分の気持ちを伝えることで、相手を不快にさせないで主張することができ、そのほうが相手の言動が変わる可能性が高くなります。

このように自分が変わることで、相手も変わることがよくあります。
もちろん、それでも相手が変わらないことがあります。
その時には、認知療法で自分のとらえ方を変えてみてるのがいいかもしれません。

まとめ

アサーションやアサーショントレーニングの意味について説明し、相手とのコミュニケーションにおける3つのタイプ(他者優先タイプ、自己中心タイプ、アサーションタイプ)とその例を示しました。
アサーショントレーニングでは、相手の気持ちを推察すること、自分なりのものの見方や考え方について考え直すこと、感情的にならないようにすること、相手を尊重していることがわかるように相手に伝えること、相手に対する要求を主張しないで自分の気持ちを伝えることが重要であり、これらについてトレーニングを継続することで、アサーティブなコミュニケーションができるようになります。

アサーティブなコミュニケーションを行っていても、意見の食い違いは、必ず出てきますので、相手の価値観や立場が違っていることを理解して、しっかりとコミュニケーションをとって、お互いに歩み寄って、対話をすることがとても大切です。

タイトルとURLをコピーしました