相手の気持ちを読み取るメンタライゼーションを用いてストレスを減らす方法

mentalization セルフケア

相手の言動から相手が何を考えているのかを読み取る(推察する:相手の気持ちをさまざまな状況から推しはかる)ことは、対人場面でよく使われますが、その推察が間違っている場合には、ストレスになる場合があります。
例えば、知り合いを食事に誘ったけど、断られた出来事があったとします。
その時に「相手は私のことを嫌っているから断られたにちがいない」と推察してしまうとストレスになってしまいます。
でも、「その日は用事があって、食事に行けなくて申し訳ないと思って、断ったのかもしれない」と推察すると、ストレスにはなりません。

このように相手の言動から相手の気持ちを推察する内容が異なると、ストレスになったり、ならなかったりします。
そこで、この記事では相手の気持ちを推察して、その状況を考え直すことでストレスを減らす方法について、わかりやすく解説します。

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相手の気持ちを推察すること(メンタライゼーションとは何か?)

相手の言動から相手が何を考えているのかを推察することは、メンタライゼーションといいます。
メンタライゼーションは、BatemanとFonagyによって次のように定義されています。

個人が自分や他者の行為を、個人的な欲望やニーズ、感情、信念、理由といった志向的精神状態に基づく意味のあるものとして、黙示的かつ明示的に解釈する精神過程

Bateman, AW., & Fonagy, P. (2004). Psychotherapy for borderline personality disorder: Mentalization based treatment. Oxford: Oxford University Press.

ちょっと難しい定義ですね。
わかりやすく表現するとメンタライゼーションとは、「自分や他人の行動のもとになっている、さまざまな心の状態(感情や気持ちなど)を推察する心の働き」といった意味になります。
「黙示的」と「明示的」については、あとで説明します。
また、この定義では相手だけでなく自分の心の状態を推察することも含まれていますが、ここでは相手の心の状態を推察することについて解説します。

メンタライゼーションを用いることで人間関係に役に立つこと

相手が話す内容だけでなく、表情や視線や身振り手振りや声のトーンなどから相手の気持ちをうまく推察することができるようになれば、メンタライゼーションの能力が上がります。
メンタライゼーションの能力が上がると、以下のように人間関係でとても役に立ちます。

  • 共感することが上手になる
  • 相手を尊重することができる
  • 人間関係によって引き起こされるネガティブな感情をうまくコントロールできるようになる
  • 他人と協力したり、対立を避けることができる
  • 相手の話をよく聴くようになる
  • 良好なコミュニケーションが取れるようになる

メンタライゼーションの能力が上がると、相手の気持ちをよく理解することができるため、共感することが上手になり、相手は自分の気持ちをわかってもらえたと感じることができ、相手がうれしいといったポジティブな感情を持ちます。
また、相手の意見が自分と異なっていても、相手の気持ちを理解することで、相手の意見も尊重できるようになります。
相手の気持ちを理解して、相手の意見も尊重することができるようになれば、人間関係によって引き起こされる怒りなどのネガティブな感情をうまくコントロールできるようになります。
そのため、他人との関係において、他社の意見を尊重することができるため、他人と協力したり、対立を避けることができるようになります。
さらに、相手の気持ちを理解するには、相手のことをもっと知る必要が出てくるため、相手の話をよく聴くようになります。
そうすると、相手は自分に興味を持ってもらえていると感じて、相手はうれしいなどのポジティブな感情を持ちやすくなります。
これら5つのことを通して、相手との良好なコミュニケーションが取れるようになってきます。

メンタライゼーションの能力とストレスやメンタルヘルスとの関連

メンタライゼーションの能力は人によって異なりますが、メンタライゼーションの能力が低いとメンタルヘルスに悪い影響を与えることがあります。
メンタライゼーションの能力が低いと人間関係がうまくいかずに、人との関係でストレスを感じることが多くなります。
一方、メンタライゼーションの能力が高いと人間関係がうまくいき、人との関係でストレスを感じることが少なくなります。

しかし、このメンタライゼーションの能力は、練習することで上達することができます。
つまり、練習によってメンタライゼーションの能力を上げることで、良好なコミュニケーションが取れるようになり、メンタルヘルスに良い影響を与えます。

メンタライゼーションの能力を高め、ストレスを減らす方法

人間関係においてメンタライゼーションは、とても重要です。
多くの場合、相手の言動から相手の気持ちを推察することは、意識しないで(黙示的に、自動的に)行っています。
でも、自動的に推察している場合は、その推察が間違っていることが少なくありません。
そのため、メンタライゼーションを用いてストレスを減らすには、自ら意識して(明示的に、能動的に)相手の気持ちを推察するメンタライゼーションを用いる必要があります。

自ら意識して相手の気持ちを推察する(明示的メンタライゼーション)能力を高め、ストレスを減らす方法の一つとして、明示的メンタライゼーションを用いた認知的再評価というものがあります。
認知的再評価とは、現実的で柔軟な考え(適応的思考)を用いることで、起こっている出来事を評価し直すことです。
認知的再評価は、認知療法の基礎になっている方法です。
認知療法の詳細については、以前の認知療法の記事を参考にしてください。

最初の例に示したように「知り合いを食事に誘ったけど、断られた」という出来事があったとします。
その時に、意識しないで行っているメンタライゼーションによって、「相手は私のことを嫌っているから断られたにちがいない」と推察してしまうのではなく、自ら意識して相手の気持ちを推察する(明示的メンタライゼーションを用いる)ことで、現実的で柔軟な考え(適応的思考)ができるようになり、「その日は用事があって、食事に行けなくて申し訳ないと思って、断ったのかもしれない」と推察することができます。

このように自ら意識して相手の気持ちを推察して(明示的メンタライゼーションを用いて)、現実的で柔軟な考え(適応的思考)を用いることで、人間関係によるストレスの多くは、減ってきます。
実際に私の診療でも、この方法を患者さんに継続してもらうことで、メンタライゼーションの能力を上げてストレスを減らすことができるようになっています。

まとめ

今回は、相手の気持ちを読み取るメンタライゼーションを用いてストレスを減らす方法について

  • メンタライゼーションの定義
  • メンタライゼーションを用いることで人間関係に役に立つこと
  • メンタライゼーションの能力とストレスやメンタルヘルスとの関連
  • メンタライゼーションの能力を高めてストレスを減らす方法

について解説しました。

相手の気持ちを読み取るメンタライゼーションの能力は、練習することで高めることができます。
また、その能力によって人間関係がうまくいくようになることが実感できます。
このメンタライゼーションの能力を高める練習を日常生活に取り入れて、より豊かな人生になることを願っています。

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