気づかないうちにストレスがたまっていることがありませんか?
ストレスがたまって、ある限界を超えると心や体や人間関係に影響を与えることがあります。
でも、ストレスについてよくわかっていなかったり、ストレスが心や体や人間関係にどのような影響を与えるのかを知らない人も多いと思います。
この記事では、ストレスを引き起こす原因およびストレスが心や体や人間関係に与える影響とそのチェック法について解説します。
ストレスとは?
「ストレス」とは、もともと物理学や工学の分野で用いられていた言葉で、物体に力が加えられた時に、物体に生じる抵抗力を意味していましたが、医学的にはさまざまな外界からの刺激によって生じる心や体の反応を意味するようになりました。
カナダのハンス・セリエは、外界から生体に加わる刺激をストレスと表現していましたが、刺激によって生じる心や体の反応と区別するために、後に外界から生体に加わる刺激をストレッサーと表現するようになりました。
一般的にはストレッサーとストレスとは区別せずに、両方ともストレスと呼ぶことが多いのですが、この記事では前者のみストレス(ストレッサー)として記載します。
ストレッサー:ストレスを引き起こす原因(要因)
一般にストレス(ストレッサー)の種類には、大きく分けて4つあります。
それぞれの例も合わせて示します。
- 物理的ストレス(ストレッサー):気温や気圧の変化、放射線、騒音など
- 化学的ストレス(ストレッサー):酸素の欠乏、薬、環境汚染物質など
- 生物的ストレス(ストレッサー):細菌、ウィルス、花粉など
- 精神的ストレス(ストレッサー):家族や友人の死、対人関係のトラブル、試験など
このうち、一般的にストレス(ストレッサー)といわれているものは、4番目の精神的ストレス(ストレッサー)です。
この精神的ストレス(ストレッサー)は、ライフイベント(生活の出来事)やデイリーハッスル(日常の悩み)に分けられます。
精神的ストレス(ストレッサー)となるライフイベント(生活の出来事)とその例
ホームズらは、いくつかのライフイベント(生活の出来事)が、その後に発症する病気と密接に関係することを示しました(J Psychosomatic Res. 1967; 11:213-218)。
ライフイベント(生活の出来事)の後に、社会に再適応するために必要なエネルギーとして、配偶者の死を100点、結婚を50点として点数化して評価しました。
つまり、この点数は精神的ストレス(ストレッサー)の程度を示すことになります。
その一部を示します。
100点 配偶者の死
社会的再適応評定尺度(J Psychosomatic Res. 1967; 11:213-218)
73点 離 婚
65点 配偶者との離別
63点 家族の死
53点 自分のけがや病気
50点 結 婚
47点 失 業
45点 退 職
44点 家族の健康上の変化
40点 妊 娠
39点 新しい家族ができる
38点 経済状態の変化
37点 友人の死
36点 仕事の変更
35点 配偶者とのけんかの数の変化
31点 100万円以上の借金
29点 職場での責任の変化
29点 息子や娘が家を出る
29点 親戚とのトラブル
28点 自分の特別な成功
26点 配偶者が仕事を始める、辞める
26点 学校に入学する、終了する
24点 習慣の変更
24点 上司とのトラブル
20点 労働条件の変化
20点 転 居
20点 転 校
16点 睡眠習慣の変化
15点 家族だんらんの回数の変化
15点 食生活の変化
13点 休 暇
12点 クリスマス
このように家族の死や離婚などの悲しい出来事のほかに、結婚や妊娠といったうれしい出来事もストレス(ストレッサー)としては高い点数になっています。また、仕事の昇進や有名校の入学をきっかけにして、うつ状態になる人も多く、うれしいこともストレス(ストレッサー)になっていることがあります。
アメリカ人を対象にした調査において、上記のライフイベント(生活の出来事)の点数の合計が一年で200点を超えると、翌年には50%の人が病気になるということが報告されました。
つまり、これらの重大な出来事や災難は、私たちを病気にかかりやすい状態にしてしまうことが示されました。
精神的ストレス(ストレッサー)になるデイリーハッスル(日常の悩み)とその例
ストレス(ストレッサー)には、家族や親友の死などの大きなライフイベント(生活の出来事)だけでなく、日常の悩みがあります。
この日常生活における悩みをデイリーハッスルといいます。
デイリーハッスル(日常の悩み)の例を以下に示します。
- 家庭や職場や学校での嫌な出来事
- 人間関係のトラブル
- 忙しいこと
- 心配なこと
- イライラしたこと
ストレスチェックをしてみましょう!
精神的ストレス(ライフイベントやデイリーハッスル)は、心だけでなく、体や人間関係にも影響を与えることがあります。
でも、日常生活で起こった出来事をあまりストレスに感じていない場合には、具体的に何が自分にとってストレス(ストレッサー)になっているかを考えたり、それに対してどう対処していったらいいかを考えることはほとんどないと思います。
そこで、まずは “ストレスが心や体や人間関係に影響を与えていないか” について以下の健康調査票(Kyudai Medical Index; KMIの質問項目から一部を抜粋して、改変しています)をチェックしてみましょう!
あてはまる項目が多ければ、ストレスを引き起こす原因であるライフイベントやデイリーハッスルについて考えてみましょう!
あてはまる項目がなくても、定期的にストレスチェックを行って、さまざまなストレスに対する自分の気持ちや感情の変化や体調や行動の変化を調べてみましょう。
【心の状態】
健康調査票Kyudai Medical Index; KMI
・集中力が落ちた
・何をしても楽しくない
・気持ちが落ち着かない
・ちょっとしたことでイライラする
・物事をつい悪い方に考えてしまう
・人の言動が気になる
・怖い夢をよくみる
・自分に自信がもてない
・過去のことで、頭から離れないことがある
・自分が悪いことをしたように感じる
【体の状態】
・眠れない
・食欲がない
・疲れやすい
・何をするにもおっくうである
・頭が重い感じがある
・首や肩がこる
・めまいがある
・はき気がする
・手足が冷える
・耳鳴りがある
・物音に敏感である
・しびれがある
・のどがつまった感じがある
・動悸がある
・胸の圧迫感がある
・急に体が熱くなる
・急に汗が出る
・目が乾く
・微熱がある
【人間関係】
・人づきあいがうまくいかない
・学校や職場や家で嫌なことが多い
・周囲の人に自分のことをわかってもらえない
・学校や職場や家に居場所がない
一部の症状は、ストレスによるものではなく、他の病気からくる場合もありますので、気になる症状があれば、病院を受診して事前に病気でないかどうかを確かめるようにしてください。