アファメーションに効果はある?心療内科医が科学的根拠・正しいやり方・逆効果を解説
心療内科医カズ
アファメーションとは?
アファメーションとは、自分自身に肯定的な言葉をかけたり、自分が大切にしている価値観や強みを確認したりする方法です。
「私は成功する」「私は愛されている」といった言葉を繰り返す方法として紹介されることが多いのですが、心理学研究で扱われるセルフ・アファメーションは、少し意味が異なります。
研究で用いられる代表的な方法は、「自分が大切にしている価値観について書く」というものです。たとえば、家族、友情、誠実さ、学ぶこと、創造性などの中から、自分にとって重要なものを選び、その理由や具体的な経験を振り返ります。
つまり、無理に「自分はすごい」と思い込む方法ではありません。失敗や批判に直面しても、「自分の価値は、この一つの出来事だけで決まるわけではない」と、視野を広げるための心理的な作業です。[1]
アファメーションには効果があるのか?
結論から言えば、アファメーションには一定の効果が期待できます。ただし、魔法の言葉ではなく、効果の大きさは全体として小さく、言葉の選び方や実践方法によって結果が変わります。
2025年に発表されたメタ解析では、67本の論文から得られた129の検証結果が分析されました。その結果、セルフ・アファメーションには、自己認識、全般的な幸福感、社会的な幸福感を改善し、心理的な障壁を減らす小さいながらも統計学的に有意な効果が認められました。[2]
ただし、この研究は主に非臨床の一般集団を対象としたものです。うつ病や不安症などの治療効果を直接証明したものではありません。
健康行動に関するメタ解析でも、健康情報を読む前に自分の価値観を振り返ることで、情報を受け入れやすくなり、行動を変えようとする意図や実際の行動に、小さいながらも良い影響がみられました。[3]
また、85人を対象とした実験では、大切な価値観について振り返った人は、ストレス課題に対する心理的・神経内分泌的な反応が抑えられていました。[4] ただし、これは比較的小規模な実験室研究であり、日常生活や病気の治療にそのまま当てはめることはできません。
なぜアファメーションが役立つのか?
私たちは、失敗したり否定されたりすると、その出来事を「自分全体の価値が否定された」と受け止めてしまうことがあります。
たとえば、仕事で注意されたときに、「今回は準備が足りなかった」と考えるのではなく、「自分は何をしても駄目な人間だ」と感じてしまう状態です。
そのようなとき、自分が大切にしている価値観や、これまで積み重ねてきた経験を振り返ると、一つの失敗と自分全体を切り離しやすくなります。
「失敗しても、誠実にやり直そうとする姿勢は自分の中にある」と確認できれば、批判を必要以上に恐れず、改善のための情報を受け入れやすくなるのです。
アファメーションが逆効果になることもある
アファメーションは、肯定的であればあるほどよいわけではありません。
ある研究では、自己評価の低い人が「私は愛される人間だ」という肯定的な言葉を繰り返すと、気分や自己評価がかえって悪化する場合がありました。[5]
心の中では「そんなはずはない」と感じているのに、現実とかけ離れた言葉を無理に唱えると、理想と現実の差が目立ってしまうためです。
ただし、その後の追試では同じ結果が再現されなかった研究もあります。[6] したがって、「自己評価が低い人には必ず逆効果になる」とまでは言えません。大切なのは、自分がどのように反応するかを確かめながら使うことです。
アファメーションを行った後に、虚しさ、自己嫌悪、焦り、罪悪感が強くなる場合は、その言葉が今の自分に合っていない可能性があります。
効果的なアファメーションの作り方
1.現在の気持ちを否定しない
まず、「不安を感じてはいけない」「落ち込んではいけない」と考えないことが大切です。
「今は不安を感じています。そのうえで、できる準備を一つ進めます」のように、現在の感情を認めた言葉にします。
2.自分が信じられる表現にする
「私は絶対に成功する」よりも、「結果は分かりませんが、準備を進めることはできます」という言葉のほうが、心に入りやすいことがあります。
アファメーションは、事実を無視して自分を説得する作業ではありません。今の自分と少し先の自分をつなぐ言葉を選びます。
3.自分の価値観を入れる
「私はすごい」と唱える代わりに、「私は、誠実に人と向き合うことを大切にしています」と、自分が大切にしていることを言葉にします。
その価値観が表れた過去の行動を一つ思い出すと、より現実感のあるアファメーションになります。
4.小さな行動につなげる
言葉だけで終わらせず、「今日できること」を加えます。
「私は自信があります」ではなく、「緊張していても、資料を5分だけ確認できます」とすると、具体的な行動につながります。
5.短く、繰り返しやすくする
長い文章を何十回も唱える必要はありません。一つから三つ程度の短い言葉を、朝や就寝前、緊張する場面の前などに静かに確認します。
声に出すことに抵抗があれば、ノートやスマートフォンに書くだけでも構いません。
心に届きやすいアファメーションの具体例
| 避けたい表現 | 現実に寄り添った表現 |
|---|---|
| 私は絶対に失敗しません | 失敗しても、学び直すことができます |
| 私は何も怖くありません | 怖さがあっても、できることを一つ選べます |
| 私は完璧です | 不完全なままでも、少しずつ成長できます |
| 私は誰からも愛されています | 私には、人との関係を育てていく力があります |
| 私は必ず成功します | 結果にかかわらず、今日の準備を進められます |
| 私はいつも前向きです | 落ち込む日にも、自分をいたわることができます |
心療内科医がおすすめする「価値観アファメーション」
心理学研究に近い方法を試すなら、次の文章を5分ほどかけて書いてみてください。
「私が大切にしたい価値は何でしょうか」
続いて、「なぜそれを大切にしているのか」「その価値を行動に表せた経験はあるか」「今日できる小さな行動は何か」を書きます。
例えば、誠実さを大切にしている人なら、次のようになります。
「私は誠実さを大切にしています。すべてを完璧にできなくても、分からないことを正直に認め、必要なことを学び直せます。今日は返事を先延ばしにしていたメールを一通確認します」
この方法では、自分を大きく見せる必要がありません。自分がすでに持っている価値観と行動を結びつけます。
アファメーションを行う頻度とタイミング
毎日必ず行わなければならないものではありません。朝の準備中、仕事や学校へ行く前、緊張する予定の前、失敗して自分を責めているときなどに、短時間取り入れる方法があります。
大切なのは回数よりも、「自分に合っているか」「現実の行動につながっているか」です。
唱えること自体が義務になり、「今日もできなかった」と自分を責め始めるなら、いったん休んでください。
アファメーションだけでつらさを解決しようとしない
アファメーションはセルフケアの一つであり、医療や心理療法の代わりではありません。
強い落ち込みや不安、不眠、食欲の変化、集中力の低下などが続き、仕事や学校、家事に影響している場合には、言葉の力だけで解決しようとせず、心療内科や精神科などの専門機関に相談してください。
また、「前向きになれない自分が悪い」と考える必要もありません。つらいときに必要なのは、肯定的な言葉より、休養や環境調整、周囲からの支援であることもあります。
よくある質問
アファメーションには引き寄せの効果がありますか
言葉を唱えるだけで、望んだ出来事が外部から引き寄せられることを示す十分な科学的根拠はありません。
一方で、言葉によって注意を向ける方向が変わり、小さな行動を起こしやすくなる可能性はあります。アファメーションは、願いを自動的にかなえる方法ではなく、自分の価値観と行動を確認する方法として用いるのが現実的です。
鏡を見ながら言う必要はありますか
鏡を見ることは必須ではありません。鏡を見ることで集中できる人もいれば、恥ずかしさや自己否定が強くなる人もいます。
声に出す、紙に書く、心の中で読むなど、自分が落ち着いて続けられる方法を選んでください。
効果が感じられないのは、努力が足りないからですか
努力不足ではありません。アファメーションが合わない人や、言葉よりも休息、運動、相談、環境調整などが必要な人もいます。
効果を感じられない場合は、「なぜ信じられないのか」と自分を責めるのではなく、表現をより現実的にするか、別のセルフケアを試してください。
まとめ
アファメーションには、幸福感や自己認識、健康行動などに小さいながらも良い影響を与える可能性があります。
しかし、効果が期待されているのは、単に大げさな言葉を繰り返す方法だけではありません。自分が大切にしている価値観を振り返り、現実に即した言葉を選び、小さな行動につなげることが重要です。
「私は完璧です」と言い聞かせる必要はありません。
「不安な自分もここにいます。それでも、今日できることを一つ選べます」
そのくらいの言葉から始めるほうが、心に無理なく届くことがあります。
参考文献
1.Cohen GL, Sherman DK. The Psychology of Change: Self-Affirmation and Social Psychological Intervention. Annual Review of Psychology. 2014;65:333–371.
https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010213-115137
2.Zhang Y, Chen B, Hu X, Wang M. The Impact of Self-Affirmation Interventions on Well-Being: A Meta-Analysis. American Psychologist. Published online October 27, 2025.
https://doi.org/10.1037/amp0001591
3.Epton T, Harris PR, Kane R, van Koningsbruggen GM, Sheeran P. The Impact of Self-Affirmation on Health-Behavior Change: A Meta-Analysis. Health Psychology. 2015;34(3):187–196.
https://doi.org/10.1037/hea0000116
4.Creswell JD, Welch WT, Taylor SE, Sherman DK, Gruenewald TL, Mann T. Affirmation of Personal Values Buffers Neuroendocrine and Psychological Stress Responses. Psychological Science. 2005;16(11):846–851.
https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2005.01624.x
5.Wood JV, Perunovic WQE, Lee JW. Positive Self-Statements: Power for Some, Peril for Others. Psychological Science. 2009;20(7):860–866.
https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02370.x
6.Flynn MK, Bordieri MJ. On the Failure to Replicate Past Findings Regarding Positive Affirmations and Self-Esteem. Journal of Contextual Behavioral Science. 2020;16:49–61.
https://doi.org/10.1016/j.jcbs.2020.03.003
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